現 実 と 人 生 の カ ラ ク リ

【御節介な死神】の御話

今回は少し【御題】染みた内容の章になります。少々変わった文面ですが御付き合い下さい。


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【御節介な死神】の御話

今回は少し【御題】染みた内容の章になります。少々変わった文面ですが御付き合い下さい。


もう気付けば8月半ば。

3月に卒業した後輩達も就職し、御盆前の初賞与を貰った頃です。
そんな中、地元や県外就職者達数名が部活を覗きに来ました。

ココ、半年無い程の期間ですが新人研修話や初任給で親にプレゼントや食事をした事を聴き、少したくましくなった姿を観ました。

自分事では無いですが後輩達に観(み)惚れてしまいました。
(※断っておきますがソッチ系ではありませんw)


そんな中、卒業者達の研修話の中で毎年部活をしていたのが命綱になった経緯も多く聴きます。

最近の企業は【部活】を重視する傾向が強く。
どうやら【組織活動】を重んじる傾向が在るようです。

確かにコミニュケーションや多少の我慢等は当たり前です。
何せ最初から想う様にはならないのですから仕方がありません。

研修内容も基本的な事から1年間全寮生活をする所もあります。
さらに毎朝の軍隊式?では在りませんがジョギングも在る所が存在します。

面白い事に企業側としては近年【睡眠】を重視されるそうです。

その為、1日のバイタルをしっかり【使い切る】事の大切さを観ているそうです。

確かに近年、携帯型情報端末が小学生にまで普及する事で【ゲーム】の依存症が多くなり十分な【睡眠】が取れず情緒が安定しない生徒も実際に御眼に掛かりました。

共働きの関係上、中々目が行き届かない事実もあります。
コレも時代の流れでしょうか…


さて、就職者達の研修で一番ハードな話は歴代でも1・2を争う過酷さを耳にしたのが【陸上自衛隊】です。
やはり入隊して数カ月でかなり脱落するそうですが訓練自体も過酷なのは当然です。

でも部活上がりのツワモノ達は何かしら【ツボ】に嵌ったのでしょう。
出る言葉が【毎日キツイですが生きている実感があります!】と語ってくれたのは凄く新鮮でした。

目がキラキラしててコレマタ観(み)惚れてしまう次第です。
人って【本当に生きている人】を観(み)ると引きつけられると日々感じます。



そーいや私(卵P)が20年以上前の研修では人生初めての【禅寺研修】でした。
今でも忘れる事が出来ない経験でした。

当時、割と優良企業で新入社員が70名近くいました。
ちなみに私(卵P)を含め高卒は8名。

何か出遅れた感があったのをよく覚えています。


基本3日間の合同研修(ちなみに私(卵P)を含めた高卒8名は後に現場に出る)でしたが、その研修は【座学】と【座禅】で占められていました。
割合は8:2位です。

当時、この【座学】が大嫌いでした。
何が嫌いかと言えば、この【座学】が【セッション(討論会)】だったからです。

全てとは言いませんが殆どの大学生や短大生は全国から集められた気の御強い方々です。
まして扱うテーマが【仕事】と来たもんだ。

私(卵P)は茫然としました。
大凡、この後の展開が予想出来たからです。

この時、私(卵P)は基本…世間様で言われる【苦学生】の類になるのでしょう。
【時間と体力】を【お金】に換金する手段を10代半ばでガリガリにやっていた手前…在る程度、大人に揉まれていたので【酒】が入ったタガが外れた言い争いは既に腐る程聴き慣れていました。

それがこの研修で【シラフ】で大学生卒の方達が論争しているのです。
とりあえず当たり障りの無いやり取りで過ごしましたが…


ココでは割愛しますが大凡、内容は予想が付くと想います。
私(卵P)はこの当時【人の心ほど流れるものはない】と、な〜んとなく想っていました。

この想いはビジネスの世界では確信になりましたが、それ程に【人の心を維持(自律・自制)する】のには本当に骨が折れるのです。



ちなみにこの【仕事】というテーマは何故か就職試験官に面接で問われたのですが、私(卵P)は気取っても仕方が無いのでストレートに【生きる為です。】と答えたのが試験官全員(5名)を沈黙させたのを今に想い出すのです。

その時の試験官(総務課長)の一人が何故か研修の補佐で来ていました。
メイン指導者は何故か若い方(総務係長)です。

休憩時間になるとその補佐の方がテクテク私(卵P)の所に来て…
『卵P君(仮名)正直、どう?退屈してない?』と訊いてくるのです。

私(卵P)は『…はァ。まあ。』

補佐の方『ココの座学は君に合わないけど頑張ってね。ちなみに私は去年まで研修責任者だったんだけど今年からは若手に譲ったんだよ。彼も必死だからね。君は少し特殊だから夕刻の座学は楽しみにしたらイイ。ココの禅寺の住職さん、すっげー面白いから、訊きたい事があったら個別に訊けば良いと思うよ。』

この補佐の方(総務課長)は、少し飄々(ひょうひょう)とした人です。
観(み)た目は【ニッコリ笑った【笑ゥせいるすまん】】の人みたいな方。
憎めない方です。


そんなコンナで1日目のしょうもない座学が終わり(当時、私(卵P)は本当にメンドクサイタイプの人間でしたw)夜の座学へ。

その時の住職さんが【座禅】から始まり【法話】そして質疑応答等、コレはマジで楽しかった時間です。
私(卵P)は訊いていてすっかり惹き込まれてしまい【どうしても訊きたい事】を個人的に訊きに行った次第です。

内容はまた別の機会に…


そんな個別に質問した最後の御話をココで話したいと想います。
ちなみに多少はうろ覚えな所があるので細部は私(卵P)が補足(色を付けています)しています。



住職さん『…そろそろ本日の終わりとして面白い御話をしてあげるw』
私(卵P)『えっ!なんすか?すっげー聴きたいです!』
住職さん『えらいノリが良いなw話したくなるじゃないかw』
私(卵P)『御願いします!』
住職さん『そんじゃ【御節介な死神】という話をします…少し有名な話なんで知ってるかもしれないけど聴いてね。原本の話自体は有名だけど私がかなりマニアックにしている話しだから。』


住職さんが話してくれた面白い御話。


***************************************************

御節介な死神。


ある所に生まれた頃から貧乏で何をやっても報われない男がいました。

その男は他の者から見れば、それはそれは働き者で真面目を絵に描いた様な若者です。


ですが【運】と言うものにこれ程見放された者が居らぬと言っても過言ではないと世が言わしめる程の【運】がありません。

真面目にやっても評価されず、常に評価を横取りされ、要領は無く自分を表現する事自体、ほとほと下手でどうしても他人に良い様に使われます。

決して野心や夢が無いわけではなく人並な位は希望も持っているのですが、全て裏目に出てしまい自信を無くしてしまっている日々を懸命に生きていました。

毎日毎日、人の2倍3倍…それ以上働きソツなくキッチリする仕事ぶりは大変見事なものです。

ですが評価されません。
そして給与にも反映されません。


そんな中、週末の夜。


明日は休日…とはいっても、やる事無し。
友人は居らず、周囲の人間は家族や恋人にと休日の時間を楽しむ準備や予定をガンガン建てて後日を楽しみにしています。

男はある意味、イイ年です。
ですが何もありません。

両親も早くに他界し親族もいません。
ただ毎日生きているだけです。



そんな中、暗い部屋の天井をボケーっと観ていたら…声がしてきます。

男は気のせいかと思いボケーっとしてると…

『…おい!聞こえてんのか!おい!』

男はびっくりしてしまいましたが慌てても仕方が無いので寝ころんだまま返事をする事にしました。

男『…ああ。いま聞こえた。何だ?』
声『…なーんか物臭な奴だな。』
男『ほっとけ。誰だお前?この手の問い掛けは俺の頭の中で喋っているのか?』
声『何だソレは?テレビの観(み)すぎじゃないのか?お前の布団の足元を見ろ!ワシが見えるだろう?』

男は仕方無く身体を起こして暗闇を観ました。
月明りで良く観えないので電気スタンドを付けて観たら、そこにみすぼらしいオッサンがリュックを背負って立って居ました。

男『どーでもイイけど、とりあえず何方様?それから何処から入った?』
おっさん『ん?ワシ?死神。そんでソコから入って来た。』と壁を指差した。

男『…そう。んで何の用?』
死神『… … … あの〜驚かないの?リアクション少なすぎると引くわ。』
男『一応、驚いてる。俺、死ぬの?』

死神は大きくタメ息をついて…
死神『はあー。お前、何でそんなに覇気がないのん?3・40代って脂が乗った人生でバリバリの時期やん?お前、生きてんのか!何処ぞの誰かに闘魂入れて貰った方が良くないか?』
男『もー…説教なら要らんから。魂抜くなら痛くしないでくれよ。優しくね。』
死神『アホか!お前の魂なんぞ要らんわ!ボケ!別の要件で来たんじゃ!』
男『要件?』
死神『そう!』


このオッサンみたいな死神の話によれば…
アッチの世界では人口が増えて仕事が忙しいらしい。
そこで人手を増やしたいのだが手伝ってくれる人が居ないらしい。

俺は毎年、『沢山死んでるからそこでスカウトするなり求人するなりすれば良いじゃないか』と尋ねたら、死神は『どいつもこいつも未練が多くて暫くは仕事にならないし、生まれ変わりたいのが大多数なんよ』との事。

そこで…この世に未練も薄く、真面目で、仕事一筋な俺に目を付けたとの事。

褒められてんのか貶(けな)されてんのか解らないが、その部分で質問をした。
俺からの質問は『ソッチの世界に行っても仕事漬けになるのはどうなの?』と質問したら死神はケラケラ笑いながら『実際、膨大な時間があって仕方が無くなる。だからヒマ潰しには仕事をしていた方が楽しい。』と答えた。

どうやら死神の話によれば【生まれ変わるまで未練を捨てる時間】が終わると【生まれ変わる時間】は気の遠くなる程に長い時間らしい。

俺は意味が解らないのと解せない事とで再度質問した。
『それじゃあ、その期間にスカウトするなり求人すれば?』と尋ねたら、今度はタメ息混じりで『それがあかんのよ。その頃には自我境界が無くなって形を保てんから仕事が出来ないからコッチ側の仕事が出来んのよ。ワシを見れば分かると思うけどナイスダンディな姿やん?』と親指立ててスマイルを決めてる。

思わず拳でブッ飛ばしたくなったが平静を保った。

少し考えて『…まあ。イイか。面白そうだし。その仕事やらせてよ。』
死神『えっ!…エエんか?お前?』
男『ああ。コッチにはコレといって未練も無いし、ツマンナイカラ。』
死神『ココまでアッサリされると殺(や)り易くて逆に殺り難いわ…』
男『まあ…気にするな。痛くするなよ。』
死神『よっしゃ分かった。そんじゃプランを決めよか。』
男『プラン?!』
死神『そりゃそうだろ。まだ十分に寿命があるからな。コッチでも【早期退職】は割増やろ?それと同じで特殊条件つけて寿命と引き換えに就職内定を取るんや。そうすると確実にその姿を保ったまんま仕事に付けられるって寸法なんや。ホレ、カタログから選んでや。』

思わず吹いたw
カタログって…何なんだこのオッサンw

説明を詳しく訊くとプランの特殊条件は【生前払い】らしく…

治癒蘇生。
能力開発。
自己能力向上。
祈祷呪殺。
人心掌握。

等々…聴くも怪しげな能力ばかりである。
ただ引き換え条件は【残りの寿命が10分の1になる】という事。
そしてその寿命が来たら強制的に死んで死神になって死神研修に入り。
その後、晴れて仕事に配属されるという事。


俺はとりあえず【未来予知】を選んだ。
理由は至極簡単。
コレならギャンブルにも応用が利くし、何より自分の死期が解るからだ。
ある程度、死ぬにも心の準備が要る。
身の回りの整理もしたいタイプだからな。
立つ鳥跡を濁さずだ。

その理由を死神に話したら…『ココまで人生に未練が無い人間見た事ないわ。
幾ら『未練がないぞ!』って言っている奴に限って往生際が悪い人間を腐る程見て来たからなァ。お前見てると何か逆に『一生懸命生きろ!』って言いたくなるわ。』とボヤいていた。

死神はリュックを下ろしゴソゴソと手を入れて取りだし俺の前に差し出した。



男『…ん。これは…コンタクトレンズ?』
死神『そう。コンタクトレンズ。早よ着けて。』
男『俺、今までコンタクトした事がないんだけど。』
死神『はあ?お前…目ェ悪うないんかい?最近のヤツはオシャレでカラコン(カラーコンタクト)する位なのに!お前どんだけ世間狭いん?』
男『うるさいな。付けりゃ良いんだろ。』

何とか頑張ってみるが不慣れなせいもあって上手く入らない…

死神『もう、見とれんがな。貸してみ!』
死神は台所に行って手を洗いコンタクトを俺の目に優しく付けてくれた。
ゴツくて太い指だったが意外にも器用である事でスンナリ入った。

死神『付け心地は?』
男『全然痛くない。』
死神『そりゃそうだろ。ワシが入れたんだからw。それとな、そのコンタクト眼球と一体化して【普通の目】として生活出来る様になるからな。未来を見たかったら1分程凝視すれば見られる様になるわ。』

死神はそそくさと帰り支度をして再度プランの確認をした。
最後に…

死神『そんじゃ時期が来たら迎えに来るけど、この事を他の奴に話そうとしても無駄やで、話そうとしたり文字に残そうとしたら無意識に言葉にならなかったり書かせない仕組みになってるからな。』と言い残して消えて行った。

別にこの後に及んでジタバタするつもりは無いし、最後になっても泣き喚く自分の姿は想像出来なかった。
『強いて言うなら、魂を抜かれる時は痛くしないでほしいな。』と呟いたら、壁から『それは大丈夫。』とさっきの死神の声が聴こえた。

男『まだ居たのかよ…』
死神『いや、も少しビビって泣くのかなって思ったけど、お前…もう少しホンマ情熱的に生きろや。』

何かイラっとしてしまい目覚まし時計をカベに投げて床に就いた。



翌朝、起床して鏡を見たが目玉はいつもと変わらなかった。
試しに自分を鏡越しに凝視したら、うっすら日付が出て来た。
何やら時限爆弾のカウントダウンみたいに1秒刻みでカウントしてる。

すぐさま気が付いたのだが、多分コレが俺の【寿命】なのだろう。
よく見るとあと4年とちょっとの残り時間…

10分の1の逆算から言えば俺は80歳近くまで生きる予定だったと考えられる。
冷静に成りつつも、【あと…こんな生活が40年も続くのか】とゲンナリしてしまった。


俺はこの【目】を試したく休日もあって競馬に行った。
実はあまり競馬には疎い…というよりギャンブルには縁が無い方なのだ。

しかし、状況が状況だけにとりあえず100円を掛けてみようと思った。
掲示画面のオッズを試しに凝視して見た。

すると…ある部分がうっすら赤色に映っている。
何となく、ああコレだなと思いその馬券を購入してみた。


すると予定通り。的中。
俺は完全に確信出来た。

とりあえず1回コッキリで競馬場を後にし換金したお金で食事を済ませ家に帰宅した。
何かと言えば今後の事をシッカリ考える為だ。

どの道、あと4年なのだから出来るだけ自由にしてみたい欲求が大きかったせいもある。
そして休日の残り半日をノートに書いてプランニングしてみた…


午後10時になり事の他、色々と考え書き込んでみた。
書き終わって感じたのだが意外に楽しい。
何だか子供の頃【将来の夢】の作文を書いた頃を思いだした。

とりあえずプランを順に上げると…

@ 資金を手に入れる。
A 願望リストの事を片っ端からやる。
B 死期が近づいたら山奥の小さな土地と中古の小屋を買う。
C 静かに御臨終。
D 死神業へ再就職。

とこの流れになる。
今までの常識ならC→Dはありえないが仕方無い。事実は事実。
ある意味、再就職するまで退職金でバカンスする感覚でもある。

Aの願望リストはありったけの事を書いたのだが期限付きなので長期的な世界一周等の旅行は止めた。
1つの願望に付き、せいぜい1カ月程度にした。


翌日、会社に行って有給申請をして後日証券会社に行き銀行から下ろし預金を全額証券口座にブチ込んだ。
携帯電話で担当の人に『これから指定する取引に必ず準じて取引する様に御願いします。』と伝えた。

そして経済新聞を取る様にして後日、株式市場を見ると不思議な事に凝視した銘柄にうっすらと未来のチャートが出るのである。

迷わずに俺は携帯電話で会社から指定した銘柄を1点買いで進め短期で転がして行った。

そして思惑通りあっと言う間に年収を数週間で叩き出し会社を辞めた。


退職した後は多少、投資で転がして十数億程稼ぐ事に成功し…税金を納め早急に打ち止めにしてプランAに移行した。

初めはノートに書いた願望を片っ端に片付けた。
初めに書いたせいもあり願望は小さなものばかり…

有名中華店で食事をしたり…
服を買ったり…
時計を買ったり…
車を買ったり…

ちなみに車は外車を見に行ったものの別に誰かに見せるステータスも無いし、友人もコレといっていないし、何より目立つのが本来好きではないのが解ってしまった。

また人は自己のステータスを魅せる為に興味の無いモノを集める心理もあるのだと理解した。


そして確かにコレでは会社でも目に付かないのが自分でも納得出来た。
あと4年という時間を【目立つ(注目される)】という快感よりも【自由で在りたい】欲求が上回ったので車は国産の普通のセダンにした。当前新車。

それから国内をフラフラと諸旅行をしてみた。

泊る旅館もランクを上げ食事も豪勢にしてみたのだが連日美味い飯を食い続けると流石に飽きてしまう。
そんな時、意外にも質素な【猫飯(ネコマンマ)】が妙に美味く感じるのは不思議な経験だった。


1〜2カ月程、諸旅行を満喫してみると確かに【ある事】を2つ感じた。


1つは【明日の心配や悩みが無い事が素晴らしい】という事。

【他人】との関わりが無くなれば、確かに【心配・悩み】が激減する。
【お金】の関わりや有限性が無くなれば、確かに【心配・悩み】が激減する。

そして、一番の特徴は【強制的スケジュール】が無くなれば、確かに【心配・悩み】が激減する事に初めて体験を通じて経験した。


週末に【サザエさん】を見てもゲンナリする事は無くなった。
事実、明日も休み…その翌日も休み…その翌日も…
そんな連日ホリデーをバカンスにしまくっているのだから当然と言える。

小学校の頃、夏休み入り初日〜1週間目の感覚と言えば良いだろうか?
あんな自由感に包まれた毎日で【明日は何をしようか…】というスカスカのスケジュールは何とも贅沢な気分だ。


もう1つは【意外とヒマというのは辛い時を過ごす】という感覚。

これは本当に自分でも驚く事なのだが【心配・悩み】が激減されて行くと自由感が増した半面、本来強制的に詰め込まれたスケジュールをヒタスラに消化する事しかした事に慣れていたせいなのか定かではないが、今は逆に初めは自分の空いたスペースを埋める事に躍起になっていた為、その反動なのか【ヒマすぎる】のも非常に辛い。

なにか虚無感と言えば良いのか解らないが、何をやるのも目的が無い状態が非常に辛く感じるのが不思議な現象なのである。


昔、文献で読んだ事があるが中世西洋の貴族達の悩みの種は【ヒマ】だった事実があったと聴く。

階級世界では基本的に労働は【タブー】とされていた為、とにかく貴族達の当面の日々の暮らしで遊びなり、趣味なり夢中になれる事を見付ける事が何よりも人生の目的だったらしい。

俺は今、その心境が良く解る気がした。


そうこうしてる内に次第に【願望リスト】もアッサリ底を付いてしまい、本当にやりたい事が無くなってしまった。

これは俺自体の【願望の少なさ】なのか?
それとも【人は本来の価値観はシンプル】なのか?
ある意味、問わされている気がした。

確かに俺はある意味、世間様からは気にも止められない存在のせいか【世間での成功】に対する欲求が異常な程に低すぎるのも自覚はしている。

その為、コレという【ステータス】を付加する物欲も情けない程に少ない。
そのせいなのか【他人の目】を惹く様な行動も取る事に躍起にもなり難い。
だからなのか…?情熱という熱気が自分から出ていないのが納得出来るのが少々寂しく思える。

考えてみれば確かにコレでは【熱の入った人生】には成らないと察する。
反面、気付いた部分もある。


それは【【そんな影が薄い自分】も結構…気に行っている。】という事。


居心地が良いのだ。
そんな自分のスタイルにココ半年〜1年の道楽で再認識した。


その後、結局…時間を持て余した結果。。。
俺は短期で海外旅行をする運びになるのだが、初めは旅行会社にプランを訊くと意外や意外!

1カ月以上のプランは殆ど無く、基本【顧客の願望】にスケジュールを組むスタイルが殆どで金額次第でどうにでもなるという事実が判明。

確かに基本プランやツアープランは存在する。
だが【地獄の沙汰も金次第】という言葉を使うのはどうかとは思うのだが現状の資金力からすればある程度はプランを融通して貰える事を教えて貰った。

最初の内は近場の韓国や台湾の旅行をしていたのだが次第に範囲を伸ばしてヨーロッパ方面や最終的にはアフリカも行ってみた。


とくに教訓になったのは不測の事態に対しての【心地】だった。



野生の動物等を生で見るのとテレビで見るのとは全く違っていた。
実際にサファリパークで見る事は過去1度あったのだが現地での野生の迫力は実に凄かった四駆の自動車でガラス越しとは言え猛獣を目の前にすると本当に心臓がドキドキした。

小心者のせいか『もし…サンルーフから動物が入って来たらどうしよう』とか思ってしまう方なのでハラハラした。

実際に現地のガイドの人が『アフリカゾウ等は群れ単位で移動していますので刺激すると大変危険です。』と説明していた。


そんな経験をして何だか少し生きた心地が本当に出来た気がしてヨーロッパに行った時に調子に乗ってしまった。

スペインの【牛追い祭り】に参加してしまったのだ…
その時、ココまで来てリアルな体験をしたと思ったのと現地のビールをたらふく飲んだせいもあって気が大きく成ってしまい『参加してみたい!』とガイドスタッフに交渉したのが発端だった。

ツアーガイドはダメの一点張りだったが何とかゴネて誓約書や念書を数枚書いた後、ようやく祭りに参加した次第である。
どうやら責任の所在が何処に成るのかが会社側の御都合の様だった。
確かにツアー会社で事故や事件沙汰になれば会社の損害に成るのは当然であるが、今回ばかりは余命期日が決定している顧客が志願しているので大目に見て欲しいものだ。


そして当日…
ツアーガイドの渋々した表情を尻目に参加ルールを通訳して貰った。
牛追い祭りは基本、牛が追いかけられるのが通例。
実際には一定のルートに牛を5〜6頭ずつ放し、走らせる過程を追ったり追われたりしながら、とある広場へ行く事で人間様は柵をよじ登り観客席に飛び込んでゴールとなる。

実際に参加してみると…牛が追って来ないのだが現地の係員に怒鳴られて走りまくった。
その内、牛の走る地響きと歓声が次第に聴こえて来ると流石に直感的に【ヤバい】と悟る様になる。

そこで遂にスイッチが入り本気で走った。



人生に限界以上に走る事って何度あるだろうか?
それ位、足が千切れんばかりに走った。
観客席に飛び込んで数十秒後に牛が一斉に広場に雪崩込んで来た。
凄まじい迫力!

テレビや一般的に知ってる程度のレベルには程遠い。
それを象徴するのがスピードである。
俺達は基本【牛】が走るというイメージが余り湧かない。

それも当然の事ながら迫力すらイメージ出来ない。
実際に見ると本当に凄いのだが体重5〜600sを超える雄牛が猛スピードで迫って来る。
その速さ実にMAXで100メートルを6秒台で走り抜けるのだ。


たかだか1q無い距離だが本当に恐怖を抱えたままの逃走は興奮と生きた心地がそこには存在した。


その後、現地の人達に『日本人は基本的に大人しい人達ばかりと思っていたがサムライは存在したんだな!遥か遠い異国の勇者に乾杯!』とヒタスラに褒めて貰ったのが殊の外嬉しかった。



その後、色んな方面に旅行に生き続け残す所…1年を過ぎた所で在る程度、気が治まり残す期日をどう過ごすかを考えていた。

そして暫くは寄付を匿名で行い、リストのBを実行に移す為に辺鄙な山奥の二束三文の土地を購入し小屋を建てた。
ココで残す半年を静かに過ごし再就職の準備を整えた。


穏やかに過ごす日々は結構良いものでこの3年と半年、今までの人生に無かった程に充実した時間だった。
その期間の楽しみはというと基本生活する為に多少の生活必需品や食糧を買い出しに行く事位なのだが、巷のスーパーやデパートに行くと人だかりに絶対に出くわす事で色々と見えてしまう事が最近の楽しみとなっている。


能力上…凝視すると個人個人の頭の上にカウントダウンが見えてしまうのだが、そこで俺は色々考えてしまうワケだ。

実際に人は生まれてしまうとノンストップで死に向かう。
そこでどの様な生き方をするのか?そして何を考えるのか?が非常に興味を掻き立てる。

それに反して次第に人間の人生という時間を多少なりとも好きに成り始めている自分に気付いた。
他人のカウントを見ながら有意義な人生を送って欲しいと願ってしまう。

確かに全てが全て有意義とは限らない。
生きていれば絶好調の時もあれば目も当てられない悲惨な時も事実ある。
今となってはそんな紆余曲折も全て愛しいと少し思えている自分に正直驚いている。

これは他人より生きる期間を限定している副産物なのだろうか…?
そんな考え事の日々を次第に送る様になっていた。


そしてついに最終日の夜に、あの死神が現れた。
あの時の出で立ちのまま。



死神『おお!久し振り!元気やったか?』
俺『…人生最終日なんで、もう少し雰囲気出して貰えないですか。』
死神『ん?!少しは生きる事への執着心が芽生えたか?』
俺『確かに無いとは言い切れないけど再就職の準備はして来たつもりです。』
死神『なんか…。。。穏やかに成り過ぎて御光が差し取るなぁ。仏様か!お前は!お前が成るンは死神やぞ!し・に・が・みっ!』
俺『ああ、解ってる。宜しく頼むよ。』
死神『なーんか実にアッサリ味や…。も少し抵抗チックになってもバチは当たらんと思うけどな。』
俺『まぁ…そう言うなよ。結構、感謝してる。この4年間色んな経験や体験が出来て視野が広くなった。それと多少なりとも自分の人生が好きになったよ。アンタの御蔭だと正直思っている。』

すると死神のオッサンは少し小刻みに震え出した。

死神『…褒め殺しは止めてくれ。マジでワシ泣きそう。こういうの慣れてないねん。』


死神は顔を真っ赤にして目を潤ませていた。
結構感動的な場面だが、俺からしてみればイイ年コイたオッサンが悶えている様にしか見えなかった。


死神『さ、気を取り直して…と。最後の数時間に成ったが何か想い残す事や要望はあるか?』
俺『別に無いけど、しいて言うなら話し相手になってくれ。』
死神『…別に構わんがワシでええんか?』

その後、残りの数時間をこのオッサン臭い死神と雑談をした。
カウントダウンが始まって1つだけ悔いが残った事がある。
それは未練を並べく残さぬ無意識の行動か?それとも元々そうだったのかは不明だが基本的に他人との関わりを極力抑えていた部分をハッキリ認識していた。

その為、最後の最後に自然と願望が行動に出た様だった。
会話の内容も他愛も無い話から、このオッサン染みた死神の経歴…
そして、この4年間の出来事。

死神は興味深々に聴き入ったり話したり、笑い転げたりしてくれた。
今となっては話した内容はどうでも良かった。
ただ、その一時を共有してくれる事が何より嬉しかった事を覚えている。


死神『おっ!そろそろ時間や。準備はエエか?』
俺『…そうか。それじゃあ再就職、頼むよ。痛くしないでくれよ。』
死神『それは大丈夫。痛みが無い程、未練が無い様だし…お前、本当にあの4年間ていう僅かな時間で充実した人生を送ったんだなぁ。正直驚いたわ。』
俺『痛みもある場合があるのか?』
死神『ケースバイケースやな。基本的に未練や執着は生きている時も痛みを伴うものやからな。お前の場合は非常に稀なケースや。流石ワシの見込んだだけの事はあるわ♪』


その後、死神のオッサンは手際良く俺と肉体を切り離したと想えば『さ、研修行こうか。』とアッサリ的に事を進め、俺を連れて行ってくれた。

研修期間も非常にスムーズで実践研修とミックスし非常に解り易かった。
他の研修生も十名程いたのだが皆、クセのありそうな者ばかりだった様だが基本的に真面目そうな面々だった。


そんな俺も気付けば死神業務に従事している毎日。
昔と余り変わらぬスタイルだが1つだけ決定的な違いがある。

それは仕事自体に好き嫌いで判断しなくなった事でライフワークに成っている状態で日々を従事している点にある。


その御蔭なのか定かではないのだが【要らぬ心配事や悩み事】からは完全に解放された事。
さらに余命期間中に培った【人間というものに興味を持てる】様になった事。

あまり言葉にはしたくないのだが…どうやら俺は儚い存在である【人間】や【人生】を好きになってしまった様だ。


来る日も来る日も【人間】に関わり。
来る日も来る日も【人生】に関わる。
この不可思議で儚いものに関わる事が今は興味が尽きる事が無い。

生前は何故か【鬱陶しく面倒臭い】ものとして心のどこかに【見たくない】という拒否的な感覚だったのだが今は全くその逆の感覚なのが自分でも不思議でしょうが無い。

扱う【人間】や【人生】を日々見ると中には驚く程に短い人生だった者、反面大往生と言われる長い人生を送る者。
毎日、自らの人生を後悔して生きる者や本当に満足行く人生を送る者。

本当に様々で多くの人生を見る。
だけど当人には【唯一無二】の人生であり【かけがえの無いもの】だと日々感じる。
そんな死神家業が生前と変わらない【仕事】なのだが何も評価を気にしないし、見返りも必要としなくなった事で好きになった事が心底解った事はこれから先の永遠とも言える【時間】を相手に出来る唯一の手段とも言えるだろう。


俺はこれからどんな【人間】に出会うのだろう?
俺はこれからどんな【人生】を見るのだろう?

そんな事を考えつつ業務に励んでいると、あの時の死神のオッサンが久々に現れた。

死神『久々やなぁ。シッカリ死神業務が板に付いて見違えたわぁ。』
俺『お久しぶりです。元気にしてましたか?』
死神『元気元気。何か生前より元気そうで安心したわ。所でそろそろ1年経つけど上から通達があって、ソレを届けに来たんよ。ハイ、コレ。』
俺『…なんですかコレ?』


何やら封筒に入っている書面を見ると…

【有給休暇の発生を御知らせします。】


死神業務に有給休暇って… ○| ̄|_


未だ不可思議な世界がそこにはあった。
この仕事は奥が深い…



おしまい。


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当時の住職さんが話してくれた内容ですが、多少私(卵P)の色を付けていますが大凡の話の流れは以上の形でした。

この話は一体何を意味しているのか当時の私(卵P)は解りませんでした。
ただ、当時聴いた直後は…( ゚д゚)ポカーン… という状態だった事は良く覚えています。


当時、住職さんは最後に『この話の意味する所は御解りですか?』という問いに若き日の私(卵P)は答える事は出来ませんでした。

その時に住職さんから2つ御言葉を頂きました。

一つは『時間が必要な話ですので答えは次第に時間の経過とともに出るかも…出ないかも…知れません。』
もう1つは『これは単なる【御話】です。』という事。


正直、私(卵P)は今現在に成っても【明確な答えが出せていない状態】かも知れません。
もしくは【意外にも答えを明確に出せている状態】かも知れません。
本当に曖昧なのです。

【皆様(アバター・Aの世界)】はどの様に感じましたでしょうか?
何かしら【皆様(アバター・Aの世界)】の中に気付きがあれば幸いに想います。

今回の章では他愛も無い御話に御付き合い頂き誠に有難う御座いました。



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